2022年4月から不妊治療が保険適応となり、以前は全額自費で高額であった体外受精も保険適応で治療が可能になりました。現状では最も妊娠率の高い治療法である体外受精ですが、それにはいくつかの段階があります。「排卵誘発」「採卵」「培養」「移植」など、様々なステップに分かれている中で、今回は体外受精の最後のステップとなる、移植について詳しく説明します。胚移植の種類や方法、実際の流れ、メリット・デメリットなどを解説します。
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目次
胚移植(胚盤胞移植)とは
胚移植とは、「受精卵(胚)を子宮に戻すこと」を言います。「初期胚移植(3日目まで培養)」か「胚盤胞移植(5-6日目まで培養)のいずれかの選択肢があります。
採卵した卵子を採取した精子と受精させ、正常受精が確認できると培養を行います。
受精1日目
正常受精卵では、二つの前核(雄性前核と雌性前核)が確認できます。
受精3日目
細胞の分割が進み、8個ほどの細胞に分かれます。
受精5-6日目
将来、赤ちゃんになる内細胞塊(ICM)、胎盤になる栄養外胚葉(TE)に分かれます。それぞれの細胞の状態について、細胞数が多いか細胞同士が密に接着しているかで評価を行います。良好胚盤胞については凍結、または移植を行います。発生速度の遅い胚については、受精6日目、7日目まで培養を続け凍結することもあります。
胚盤胞移植とは、この5-6日目まで発育した胚を移植することです。全ての受精卵が胚盤胞になるわけではなく、個人差や年齢、周期によりその確率は大きく変わります。
以前は3日目までしか体外での培養ができませんでしたが、培養技術の進歩により5-6日目まで培養が可能になりました。胚盤胞まで発育する胚はそれだけ生命力が強いとも言え、初期胚移植よりも高い着床率が見込めます。
胚移植ができる人・対象者
胚盤胞移植は、初期胚に比べ妊娠率が高いため、胚盤胞まで培養できる可能性がある方は胚盤胞移植の方がおすすめです。
一方で、初期胚が胚盤胞まで到達できるかは保証できません。胚盤胞を目指しても途中で発育が止まってしまう場合は、移植まで全くたどり着けない場合もあります。体外で発育が止まってしまった胚をもっと早くに子宮に移植していたら、その胚は生存し、着床していたかもしれない可能性があります。そのため、これまでの胚の発育状況等を考慮し、胚盤胞移植が適切な選択肢かどうかを判断する必要があります。
胚移植を行うメリット・デメリット
胚盤胞移植のメリット
妊娠率が高い
5-6日目まで発育した良好な胚を選択できるため、初期胚(3日目)と比べ妊娠率が高くなります。
異所性妊娠の可能性が低くなる
子宮内膜ではない場所に着床してしまうことを異所性妊娠と言います(主に卵管に着床することが多いです)。自然妊娠でも数%の確率で起きますが、子宮内に胚を戻す体外受精の胚移植でもその可能性を0にすることはできません。ただし、初期胚移植での2-5%という確率に対し、胚盤胞移植では1%以下と可能性を下げることができます。
胚盤胞移植のデメリット
移植のキャンセル率が高い
高い妊娠率を誇る胚盤胞移植ですが、そこまで育つことが前提となります。中には3日目までは育つけれど胚盤胞にはならない方もいらっしゃり、その場合は移植がキャンセルになる確率が高くなります。
2段階胚移植とは
2段階移植とは、3日目に初期胚を移植し、同じ周期の5日目に胚盤胞を移植する方法です。着床する時期には胚と子宮内膜がシグナル交換をしており、胚が着床にむけて子宮内膜の環境に影響を与えているのではないか?という考えに基づいた治療法です。初期胚を先に移植することで子宮内膜が刺激され、着床に向けての環境が整い、後に移植する胚盤胞の着床率を上げるのではないかと考えられています。
この治療法は現状保険適応ではなく、先進医療として認められています。
先進医療:特別に認められた保険適応と併用して良い自費の治療のことです。通常、保険と自費の治療を同時に行う混合診療は認められていません。
2段階胚移植ができる人・対象者
以前の胚移植で不成功だった人
初回の移植から2段階移植は通常は現状行われていません。反復不成功(何回か移植を行ったが妊娠しなかった人)が対象となります。
初期胚と胚盤胞が両方凍結できる人
1周期に初期胚と胚盤胞の2つが必要となります。胚盤胞まで育たない方は実施できません。また、1周期内に黄体ホルモンを開始してから3日目と5日目の2日間移植の日程を調整する必要があります。
2段階胚移植のメリット・デメリット
2段階移植のメリット
妊娠率が上昇する可能性がある
現段階では妊娠率が上昇するという国際的なエビデンスはないため、胚移植の際にルーチン治療として行うのは難しいと考えられます。施設によっては妊娠率の向上を認めるという報告もあるため、選択肢の一つとして考慮されます。
2段階移植のデメリット
多胎妊娠(双子や三つ子)のリスクが上がる
1つの胚盤胞を移植しても多胎妊娠の確率は0ではありませんが、2段階移植では複数個の胚を移植するためその確率は大きく上昇します。
胚移植の進め方・選択肢
通常胚移植は、自然周期(全く薬を使用しない)、ホルモン補充周期(薬で移植時期を調整する)があります。施設により異なりますが、一般的には生理2,3日目に受診し、自然周期であれば排卵が近くなるころに数回、ホルモン補充周期であれば初回受診から約2週間後に1度受診し、移植の日程を決めます。
胚移植にはいくつかの選択肢があります。
①凍結の有無:A新鮮胚移植 B凍結胚移植
②何日目の胚を移植するか:A初期胚 B胚盤胞
③移植の個数: A 1個 B 2個C 2段階移植
④凍結融解胚移植の方法:A.自然周期移植 Bホルモン補充周期移植
⑤移植のオプション:A アシステッド・ハッチング B エンブリオグルーなど
それぞれ適応となる方や、先進医療の場合は導入している施設かそうでないかにより選択肢の有無が変わる可能性があります。通院している病院に、お勧めの方法やその施設で行っている治療法を相談してみましょう。
新鮮胚移植と凍結胚移植の違いは?
新鮮胚移植
採卵した周期と同じ周期に培養した胚を戻す方法です。一度も凍結せずに移植を行うため、新鮮胚移植と呼ばれます。採卵と移植を同じ周期で行うため、時間を短縮できるメリットがあります。刺激方法や採卵個数によっては行えないことがあります。
凍結胚移植
採卵し培養した胚を一度凍結し、別の周期で移植する方法です。以前は新鮮胚移植がメインでしたが、凍結技術の発達により、胚の生存率が格段に上昇し実施する病院が増えています。採卵と移植が別の周期になるため時間はかかりますが、卵巣過剰刺激症候群の予防や卵巣の反応性が高い方にとっては妊娠率を上昇させる可能性があります。
融解胚移植の方法と流れ
自然周期
自身の自然な卵胞発育に沿って移植周期を組み立てていくため、基本的に生理周期が順調な方が適応となります。
①生理2-3日目
超音波で卵巣の腫れがないかや、必要に応じて採血でホルモンを調べ、移植周期開始に適した状態かを調べます。
②生理12日目前後(生理周期により個人差があります)
超音波で卵胞のサイズや、採血でホルモンの状態を計測し、排卵日がいつ頃になりそうかを推定します。早すぎる場合は数回の受診が必要になることもあります。
③排卵日から5日後
胚盤胞を移植します。初期胚移植の場合は3日後が移植日です。
④移植から約10日後
採血で妊娠判定を行います。
メリット
薬を使用しない
毎日定期的に薬を使用する必要がないため、副作用や飲み忘れの心配がなくなります。
デメリット
受診の日数が増えやすい、移植の日程が読めない
基本的に生理周期が順調な方でも数日の排卵日のずれが起きることは珍しくありません。そのため、排卵日の推定のために何回も受診したり、移植日が予め決められない、あるいは希望通りの日程になるとは限らないため予定の調整が難しいケースがあります。
移植がキャンセルとなる場合がある
どんなに健康な方でも卵胞が育たない周期があり、その場合その周期に移植はできません。また、予想外に排卵が早く起きることもあり、その場合も移植はできません。さらに、保険で行える超音波や採血の回数には決まりがあるため、状況により正確な排卵日が推定できないことがあります。また、病院の休診日と移植日がかぶってしまう場合も移植ができないことがあります。
ホルモン補充周期
基本的にはどのような方でも適応となります。
①生理2-3日目
超音波で卵巣の腫れがないかや、必要に応じて採血でホルモンを調べ、移植周期開始に適した状態かを調べます。内服や外用薬(テープやジェル)を使用しながら内膜を育てます。
②生理14-18日目ごろ
薬を使用し始めてから約2週間前後で超音波で内膜の厚さを計測します。一定の厚さになっていれば移植日を決定します。薄い場合は薬を増量しながらさらに1週間後にもう一度内膜の厚さを調べることがあります。
③黄体ホルモン剤使用
胚盤胞は排卵から5日後相当になるように、初期胚の場合は排卵から3日後相当になるように黄体ホルモン剤を使用して移植をします。黄体ホルモン剤の使用開始日を調整することで、移植日をある程度コントロールすることができます(遅らせることはできますが、前倒しにすることはできません)。
④移植から約10日後
採血で妊娠判定を行います。妊娠していた場合、ホルモン補充は少なくとも妊娠8-9週くらいまで継続します。
メリット
月経不順や無排卵など、どのような方でも行える
月経周期が不順な方の場合、中々排卵が起きないため通院頻度が増えたり、そもそも排卵が起きないと移植自体できないことになります。ホルモン補充周期の場合は、薬によって子宮内膜を排卵した時と同じように変化させるため、排卵の有無に関係なく移植することができます。
移植の日程が選べる
生理2,3日目の受診の後の内膜の厚さを調べる時期は2週間前後の数日間と幅があり、〇日目に受診しなければならないということはありません。また、移植日は内膜の厚さが十分と判断されれば、ある程度は都合が合う日を選択することができます(移植前に黄体ホルモンを使用する必要があるので、自由に前倒しにすることはできません)。このように、日程をある程度コントロールすることができるため、仕事の調整などのストレスが少なくて済むことがあります。
デメリット
毎日薬を使用しなければならない
薬の種類にもよりますが、1日2-3回の内服薬、2日に1回の張り薬、1日1-3回膣に挿入する薬などを使用することになり、使用する時間帯もある程度決まっているため、忘れないようにする必要があります。妊娠していた場合は最長で2か月程度使用します。また、黄体ホルモン剤を開始する日程を間違えると移植自体がキャンセルになる可能性があります。
副作用が出ることがある
ほとんどの方は問題なく使用できますが、中には吐き気やテープ・腟錠によるかぶれなどの副作用に悩まされる方がいます。また、ごくまれにアレルギーが起きることがあり、その薬の使用は避けなければならないことがあります。
自然周期もホルモン補充周期も、妊娠率・出生率は同等とされています。メリットやデメリットを考慮し、どの方法が自分に合っているか、また通院先の施設としてどの方法を推奨しているか相談してみましょう。
胚移植(胚盤胞移植)のご相談は松本レディースIVFクリニックへ
当クリニックは、「赤ちゃんが欲しいのになかなかできない」と悩んでいらっしゃる方のための不妊治療専門クリニックです。
妊娠しにくい方を対象に、不妊原因の探索、妊娠に向けてのアドバイス・治療を行います。
1999年に開業し、これまで、不妊で悩んでいた多くの方々が妊娠し、お母様になられています。
当院の特徴につきましてはこちらをご参照ください。
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まとめ
今回は胚盤胞移植を含む、移植の様々な質問について説明しました。高い妊娠率を誇る治療法である体外受精の中でも、最後の重要なステップである「移植」ですが、それにはいくつかの選択肢があります。個人の体質や時間的余裕などの状況により、お勧めする方法が変わることがあります。また、オプションや移植方法もそれぞれメリット/デメリットがあります。ご自身にどの方法が最も有効か、通院中の病院に相談してみましょう。