不妊治療が保険適用になったため、今まで自費で高額だった体外受精まで含め、3割負担で治療ができるようになりました。また、保険適用になったことで、これまでは適応の範囲外だった民間の医療保険でも、治療内容や特約によっては給付金が受け取れる場合が出てきました。治療のステップによってはかなり費用が抑えられる可能性があるため、不妊治療から妊娠・出産まで含め民間の保険加入を検討している方が増えています。今回は不妊治療にかかる費用について、公的な医療保険で賄える費用、民間の医療保険で補える部分について解説します。
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目次
約3組に1組は不妊治療に悩んでいる
国立社会保障・人口問題研究所「2002年社会保障・人口問題基本調査」、「2005年社会保障・人口問題基本調査」、「2010年社会保障・人口問題基本調査」、「2015年社会保障・人口問題基本調査」、「2021年社会保障・人口問題基本調査」より
2022年の厚生労働省の発表によると、日本では、不妊を心配したことがある夫婦は39.2%で、夫婦全体の約2.6組に1組の割合になります。また、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は22.7%で、夫婦全体の約4.4組に1組の割合になります。つまり、不妊症について心配したり、実際に治療を受けるカップルはけして珍しくないことがわかります。
例えば、国民病とも言えるがんですが、国立がんセンターがん対策情報センターによると、一生涯のうちに何らかのがんになる割合は、男性で49%、女性で37%とされています。「日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんになる。」と言えますが、この割合と不妊治療に悩んでいる夫婦の割合がほぼ等しいことを考えると、自分たちと縁遠いとは言えないと感じますね。
不妊治療にかかる費用の目安
不妊治療には3つのステップがあります。
- ① タイミング法
- ② 人工授精
- ③ 体外受精
①②を合わせて「一般不妊治療」、③を「高度不妊治療」と呼ぶこともあります。それぞれの治療法と費用を以下に詳しく説明していきます。
※費用についてはモデルケースです。それぞれの通院回数、使用する薬や個人の体質によって大きく変わります。また、保険適応の例を記載しています。自費の費用は病院によって変わります。
① タイミング法
月経周期から計算し、排卵の可能性が高い時期に性交渉をもつ(タイミングをとる)方法です。排卵時期をより正確に推定するために、その時期が近くなると何回か超音波で卵胞の大きさを計測したり、卵胞が育ちにくい場合は排卵誘発剤を使用することがあります。
メリット
時間的・費用的負担が少ない。
デメリット
妊娠率が低い。
費用
約1万円以内
② 人工授精
排卵する可能性の高い日に精液を採取して病院に持参し、遠心分離して良好な精子を集めて子宮内に注入します。膣内でスタートするタイミング法よりも精子が移動する距離が短くなるため、軽度の男性因子がある方や性交障害がありタイミングが取れない方に効果があります。
メリット
タイミング法より妊娠率が高くなる。
デメリット
大幅な妊娠率の上昇は見込めない(年齢によりますが5-10%程度)。人工授精当日に時間を作る必要がある。(男性は自宅採精であれば当日朝採取できること、女性は病院の指定した時間から処置に2-3時間程度必要)
費用
タイミング法+処置代5460円
③ 体外受精
体外受精とは、女性の卵子を取り出し、男性の精子と受精させ、受精卵(胚)を培養して、発育した胚を子宮に戻して着床を促す治療です。
このように体の外で受精を行うので体外受精といいます。
大まかな流れは下記の通りです。
A) 卵巣刺激:内服薬や注射を使用し、できるだけ多くの卵子を育てます。
B) 採卵:一般的には腟から卵巣に針を刺して卵子を採取します。
C) 受精:精子の数や運動率に問題のない方は体外受精(ふりかけ法、シャーレの中に採取した卵子と調整した精子を置き、自然な受精を待つ)、数や運動率に問題がある方は顕微授精(形や動きが良好な精子を針で卵子の中に直接注入する)を行い、受精させます。
D) 胚培養:受精した受精卵を培養器の中で育てます。
E) 胚凍結:受精後3日目、あるいは5・6日目の時点で良好に育った胚を凍結します。
F) 胚移植:凍結した胚を融解し、子宮の中に戻します。/p>
上記が一般的な流れですが、排卵誘発をせず卵子の自然の発育を待ち採卵、その周期に胚を移植する(卵巣刺激せず胚凍結もしない)「自然周期」と呼ばれる方法もあります。
メリット
高い妊娠率が期待できる。胚が複数凍結できた場合、2人目以降の治療でも凍結ができた年齢の妊娠率が期待できる。
デメリット
通院回数が多くなりやすい。費用が高額。
費用
15-20万程度(保険の場合、高額療養費制度が使えることがあり、費用が抑えられる可能性があります。収入により上限が変わります。)
また、体外受精には先進医療という、保険と併用できる特別に認められた自費診療が併用できることがあります(本来、保険診療は混合診療の禁止という原則があり、保険適応で治療を受けるには全て保険内でおさめなければならず、保険適応でない薬や治療法を併用すると、全て自費となります)。自費診療のため、この治療費だけで数万から数十万かかることがあります。
詳細な費用は下記のリンクをご覧ください。
こちらもチェック:当院の治療費について
こちらもチェック:人工授精などの不妊治療にかかる費用はいくら?保険適用についても解説
不妊治療の治療費は民間の保険で備えられる?
まず、前提として公的な保険や助成金が使えるかを調べてみましょう。
① 高額療養費制度
高額療養費制度とは、1カ月(月の最初から最終日まで)の間に医療機関で支払った額が一定の上限額を超えた場合、決められた額を超えた分のお金が払戻される制度のことです。通常、医療機関にかかった場合、窓口で負担する医療費は総額の3割で、残りは公的医療保険から「療養の給付」を受けられるため、支払う必要がありません。
ただし不妊治療で高額な治療をしたとき、公的医療保険制度の利用で自己負担額が3割に減ったとしても家計の負担としては大きくなる可能性があります。しかし、高額療養費制度を利用すれば医療費の負担を軽くすることが可能です。 高額療養費制度は、健康保険や国民健康保険といった公的医療保険制度の1つで、自己負担限度額は年収で異なります。
厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より
高額療養費制度は3割の医療費を支払った際に、自己負担限度額を超えていれば、その分を「払戻」される制度です。しかし、一旦は支払う必要があるため、窓口での支払いが負担となることもあるでしょう。
高額療養費制度には、一定の手続きをすることで、窓口での支払いをおさえられる方法があります。また、世帯の医療費を合算することで自己負担をさらに減らしたり、医療費が高い月が続いたら自己負担限度額が引下げられる仕組みもあります。
【限度額適用認定証】
通常、高額療養費制度は自己負担限度額を超えた分のみ「払戻し」を受ける仕組みになっているので、一旦は医療費を支払う必要があります。さらに、払戻しを受けるには審査期間も含めて数か月の時間を要します。
しかし、あらかじめ医療費が自己負担限度額を超えることが見込まれる場合は、加入している公的医療保険に申請することで「限度額適用認定証」を交付してもらうことができます。限度額適用認定証と保険証を提示すれば、窓口における支払いを自己負担限度額まで抑えることができます。
【世帯合算】
個人では限度額に満たなくても、同一世帯内で自己負担額を合算して限度額を超えれば高額療養費制度を利用できます。このことを世帯合算と言います。70歳未満の方は21,000円以上の自己負担額をすべて合算できます。
【多数該当】
12カ月以内に3回以上、自己負担限度額に達した場合は、4回目以降「多数該当」になって自己負担限度額が引下げられます。
② 助成金(市町村や会社など)
不妊治療そのものや先進医療について、市町村や会社が独自で助成金制度を支給している場合があります。例えば東京都では、体外受精における先進医療について、7割の助成金を支給しています(年齢により回数制限があります)。お住いの自治体や会社にそのような制度がないか調べてみましょう。
上記を知った上で民間の医療保険について考えてみましょう。
民間の医療保険でも様々な種類があり、給付金が受け取れる条件一つとっても「契約した段階で全ての治療について」「女性特約をつけると」「手術として認められた治療のみ」などそれぞれで異なります。また、回数の制限を設けている場合もあります。
高額療養費制度を利用した上で自分たちの負担がどの程度になるか計算しつつ、民間の保険に入ったら月々どの程度の支出になるか収支バランスを計算してみましょう。家計により、高額療養費制度で十分という方もいれば、長い目で見たら不妊治療を含め保険に加入した方が良い方、様々なパターンが考えられます。
不妊治療に備えた保険の選び方は?
不妊治療が始まったり、妊娠すると新しく生命保険に入れない場合があります。また、すでに加入している方は、自分の加入している保険の補償内容がどこまで適応されるか確認してみましょう。保険に加入する時には告知、健康診断書の提出もしくは保険会社が指定した医師の診査を受ける必要があります。告知書の質問に対して、事実をありのままに答えなければなりません。このことを告知義務といいます。後で告知義務違反がわかると、その契約が取り消されることがあります。
① 不妊治療前の方
不妊治療をするために受診をすると、それ以降は新たに民間の医療保険に加入できなくなることがあります。受診前であれば選択肢は広いため、上記の公的な部分での自分たちの負担とどこまで保障を受けたいかを考えて選ぶようにしましょう。本格的な不妊治療をすることなく妊娠できた方でも、妊娠中は思わぬ合併症で長期入院になったり、出産方法が帝王切開になると入院や手術の給付金が受け取れることがあるため、妊娠中のトラブルまでカバーされるかも一つのポイントです。妊娠中は妊娠適齢期である若くて健康な女性でも、高額な医療費がかかる可能性が高い時期と言えます。不妊治療のみならず、その後の妊娠、出産まで見据えた保障内容であるかを確認しましょう。
ただし、医療保険に加入する場合は、「保障が開始される日」に注意しましょう。中には、不妊治療の保障については、契約したらすぐに保障の対象となる商品もある一方で、「保障の開始日から〇年経過後の治療が対象」など、保険に加入してすぐには保障が受けられないことがあるからです。不妊治療に備えて医療保険の加入を検討している場合は、保障が開始される日までの期間(=免責期間)の有無やその期間を必ずチェックしてから加入するようにしましょう。
② 不妊治療中の方、妊娠中の方
すでに不妊治療のために通院している場合や、妊娠している状態で民間の医療保険に加入する場合は、選択肢がかなり限られるか、医療保険の加入自体ができないことも珍しくありません。加入できても、現在進行形の妊娠に関する保障は対象外となることが多いです。
しかし、一部では妊娠中期くらいまでなら、保険に加入でき、現在の妊娠中の入院や手術も保障してくれる生命保険もあります。もし加入するとしたら、自分が加入できるのか、加入できたとしてその不妊治療や妊娠は保障に含まれるかをよく確認しましょう。
不妊治療のご相談は松本レディースIVFクリニック
当クリニックは、「赤ちゃんが欲しいのになかなかできない」と悩んでいらっしゃる方のための不妊治療専門クリニックです。
妊娠しにくい方を対象に、不妊原因の探索、妊娠に向けてのアドバイス・治療を行います。
1999年に開業し、これまで、不妊で悩んでいた多くの方々が妊娠し、お母様になられています。
当院の特徴につきましてはこちらをご参照ください。
https://www.matsumoto-ladies.com/about-us/our-feature/
まとめ
今回は不妊治療の費用と公的保険・民間の医療保険との関係について解説しました。実際には各々の高額療養費制度の上限や、家庭の収支バランスにより、民間の医療保険の加入を勧める/勧めない、あるいはどこまでカバーするものにするか画一的におすすめしたり決定することはできません。ただし治療を開始すると入れなくなる保険も少なくないため、加入を検討している方は早めに家計の見直しをしてみましょう。必要に応じ、ファイナンシャルプランナーなどお金のプロに相談することも考えてみましょう。